水鏡文庫

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おわり

 

生きていることがどんなに尊いかなんて、そんな腥い話をしたいわけではないんだな。ぼくはもっと、大空を泳ぐジンベエザメの話とか、海にきらめく流星群の話とか、ミルクを飲む子牛の可愛らしさとか、そういう話をしたい。

 

ぼくには、救いたいひとがいた。救いたくて、でも、もがけばもがくほど救えない、ひとがいた。救えなかった。なぜなら、ぼくは、あの男児に、ぼく自身の影をみていたからである。結局のところ、救いたいひとは、ぼく自身で、それでしかなかった。ぼくは、ひとが生きていることに救われることはあっても、救おうとしてくる人間のことが、どうしても、好きにはなれなかった。ぼくの苦しみは、たったひとりのぼくだけのものなのに。それを、ぼくは、ある男児に重ねて、ひとりで気持ちよくなっていたのだ。男児は、突然、塾をやめた。来られなくなった。ぼくは、男児のことなど、なにひとつ考えてなかったのだ。そう気付いたときは、もう何もかも遅かった。私はときどき、あの男児のことを思い出す。

 

あの夏の日に、アスファルトに溶けたぼくがいつまでも見つめていた。いっそ、どろどろにとけていられたらいいのに。肌に張りついたしろいTシャツに、白い骨みたいな腕が太陽に反射した。

 

心配されるのが好きだった。優しくされたかった。怒られるのが怖いから。みんなぼくに優しくしたらいいのに。

 

人間を愛していたい。

 

最近、どうですか。私は、この1ヶ月に入退院を繰り返して、3回目になります。先天性の病気が暴れて、コントロール出来なくなったからです。私は、いまの仕事先が、私の人生のなかで唯一無二の誇りでした。でも、それをなくすかもしれない恐怖に、悔しくて、名刺を破って捨てました。泣こうとしてないのに、勝手に涙が出てきて、涙腺がぶっ壊れて、かなしくて、どうしたらいいか、わかりません。

 

今日はおわりです。今日でおわりです。明日から秋です。ほんとうに?

 

死にたかったのに、本当に死にそうになったから、死にたくなくなる。そういうもんかな。

 

やる気ない

 

おわり