水鏡文庫

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みずいろ

拝啓、みずいろのあなたへ

 

みずいろが好きだ。

 

みずいろはぼくのいろだった。いつでもぼくのいろだった。ぼくだけのいろ、ではないけれど、たしかにぼくのいろだった。アイスキャンデーのみずいろ。海のみずいろ。カシャカシャしたウィンドブレイカーのみずいろ。イルカの碧。海月のおよぐみずいろ。綾波レイのみずいろ。ぼくはだれよりも綾波レイになりたかったのに、結局なれなかったのだから。それでよかった。

 

夏がおわる。しらないうちに夏がおわっていく。しおれているひまわりと、溶けないアイス。

 

病院の窓がちょっとしか開かない。しけてんなあ。10センチしか開かない。網戸はない。そこからみえる風景なんて限度がある。夏にしらんぷりしていたら、寒くなってきて、ちょっとかなしいけれど、夏に会えなかったきみのこと、いつまでもわすれないとぼくはおもう。

 

だれがいちばんがんばってるなんてさ、そんなかなしいこといわないでよ。だれもかれも、じぶんの人生やってくためにがんばってるんだよね。だれかの一部分を切り取って、がんばってるとかがんばってないとか、わるいとかよいとか、判断すんのいい加減やめていきたい。だけどさ、それがどうしても、どうやってもできないときがあったから、本当に悔しかった。ぼくは、ぼくなりにみんなに優しくありたかった。とても優しく、知的な人間になりたかったのに、しらないうちに、だれがわるいかとか、そんなことばっかり考えて、だれもわるくないのに、かなしかった。

 

私がいないほうが、歯車がうまくまわるようなそんな気がして、死ぬ勇気も元気もないけれど。

 

ふわふわ、やさしさ、みずいろ、もくもく、ぜんぶあつめて、きみにあげたい。

 

私はやさしくなりたい。みんなをだいすきになりたい。ひとを憎みたくない。だけど、私もひとだから、どうしようもなくひとを憎みたくもなってしまう。その狭間で、ゆらゆらゆれている。風にふかれたやさしいたんぽぽみたいに、ゆれていたらいいとおもう。

 

やさしいきもちもふんわりした気持ちも大事にしたいな、あなたのことがすきでいたいよ。

 

みんな、生きていますか。私は、生きています。うまくやりましょうね、またお手紙を書きます。