水鏡文庫

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道ばたの天使

 

氷のようなつめたさが身を貫いて、なんだか悲しくなるような冬の日に、道ばたできみと出会った。死にそうなうつくしさが、きらきらに光ってぼくの瞳を反射する。きっと、天使に出会ったのだった。だれも、信じなくていいのだけれど、本当にきみはぼくに訪れた天使だったのだ。

 

もう自由にしてくれと、それだけのことがいえなくて、くるしくて仕方がなかった。私はずっとここに閉じ込められたまま、生きるのだろうか。不安定で、強風に吹き付けられた道ばたの天使みたいにゆらゆらと揺れては、そこに留まる。なにもできない、無力な私は誰からも愛される資格などなく、そもそも愛に資格など存在しないのに、いままで生きてきて愛には資格があるようにしか思えなかった。だって、そうやって生きてきたのだから。不器用でも、愛されたかったから、手首を切って血を出して、SOS出してたけど、届かなかったから、もう死んでしまいたくても、いつまでも死ねないでここまできたんだな。

 

いちどでいいから、たくさんのひとから認められてみたいのだ。そういう欲望があって、それでも叶わないから、愛されようとしたんだな。だけど、ただの都合のいい存在にしかなれてないことに気がついて、ああ。

 

水色が膨張したウインドブレーカーをシャカシャカいわせながら、悲しみに身を置いて、ジッパーのついたポケットから、貝印のピンクのカミソリが5本でてきた。でも、興味さえわかなかった。自殺ごっこに疲れたんだ。しろく浮腫んだふくらはぎに爪で跡をつけて、靴下を脱いで布団にくるまった。今はまだ、お昼の3時だよ。

 

ずっと眠りこけていたい。誰からも怒られたくない。無視されたくない。苦しみたくない。つらい。ママに愛してほしい。ママ、ママ、私はここだよ。ママ。

 

悲しいくらいになんもない日々がいつまでも続くわけもなく、やらなくてはならないことは膨大に溜まっていく。

 

生きるしかないから、生きるよ。

今年もよく生きたよね、来年もなんとか。

 

追伸 見捨てないでなんていえないから、どうか好きでいて