水鏡文庫

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逝く夏によせて

 

逝く夏?

まだまだだね、まだ生きている。しばらくしぶとく生きているよ、私を殺すくらいには。私を殺せるのは、思想だけだよ。

 

悲しみという感情に、こんなにも身を削られることがあるのかというくらいに、苦しいことが耳に針のように刺さって、抜けてくれない。人間はひとしく人間で、男とか女とか両方とか同じくらいとかちょっと男とかちょっと女とかだいぶ男とかだいぶ女とか、そんなので優劣なんてつけられないのに。みんな、生きようとしてる気持ち悪い人間なのに。だからこそ、うつくしくて仕方ないのに。特定の何かが、不利になる世界は、まだ死んでいないみたいだ。私は、それで絶望していた。暗闇を見ていた。

 

でも、暗闇から覗く君の顔は、確かに気味が悪くて、心地よかった。柔らかい君の、ほっぺたに包まれている頭蓋骨が、にんまりと微笑した。

 

君のてのひらには、魔法があるの?ぼくは、取り上げられてしまったから、ない。

 

私の部屋に、天使がやってきた。望みをかなえてやるというので、四六時中思考を巡らせているうち、これが望みだったのだと悟った。

 

大人数でお話ししていて、ふとその場所から、幽体離脱したように、天井から私を見つめている私と出会った。大人数でいるとき、突然に、私はひとりぽっちになってしまう。浮いていた。

 

君に出会えるように、生きておくよ。