水鏡文庫

Twitter→@Mizukagami100

繕い

 

取り繕ってるようにみえているのだろう。必死に生きているつもりだった。どうにか継ぎ接ぎのぼくで間に合わせることができるほど、かなしいことに、ぼくはかしこくはなかった。凍ってしまったミネラルウォーターは、ぼくののどを潤してはくれなかった。役に立たない。ぼくだって、なんの役にだって立ってないような、そんな気さえするのに、そんなのぜんぶ幻覚だと思い込んでしあわせに暮らそうとしているだけなのだろうね。こうして、繕い、針と糸でちくちくしながら、生きている。それしかできないのだと思っている。でも、悪くはないんだ。ぼくは、ちょっとだけこの生きかたを愛してしまっているからさ。

 

ぼくは、いつまでもフィルムのなかに閉じ込められている。薄暗いロードムービーと、いつまでも佇むぼく。水色のセーラー服の、あの子。

 

償い、なんて辛気臭えタイトルにはしたくなかった。なんも償ってやいない。ぼくは、ぼく自身を繕いながら、生きてきたのだ。愛される価値も、愛される自信も、なにもなく。愛されていても、それが愛だと自覚が持てず。ぼくはぼくを尊重することに欠けているみたいだ。デカい自尊心の壺の底には、じつは穴が空いていて、誰かからもらった感情が、いったん溜まったかと思いきや、穴からどろどろ流れ落ちていってしまう。ぼくの、自尊心の壺はいつも空っぽだ。穴をちいさくするには、どうしたらよいのか、医者と話しながら。ぼくは、かならずぴかぴかの自尊心の壺を手に入れてみせる。穴が空いてない、つるりとした底の。

 

生きていることを褒めてくれてありがとう。生きてきたことを認めてくれてありがとう。23年間も生きてきてしまったから、この先もたぶん流れに任せて生きていくんだろなと、そう思います。自殺はもう諦めました。人一倍高いプライドと穴が空いた自尊心の壺を抱えて、ぼくはぼくを繕いながら、ちょっと生きます。めちゃくちゃ生きません。めちゃくちゃ生きると、疲れますからね。なめるなよ。