水鏡文庫

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はじめて同人誌を買った話

「漫画を読むと馬鹿になる!あなたは馬鹿じゃないんだから、馬鹿がうつるわ、返していらっしゃい!」

 

友だちから借りた少女漫画雑誌を抱えている小学生の私に、母親が言い放った、いまも忘れられない言葉である。

ママに嫌われたくない。ママが好きないい子になりたい。そう思っていた私は、母親が否定したものを、嫌いになった。

弱くて小さい、病気を持って生まれた私を、外界に触れさせないように、幼稚園にも通わなかった。

 

それから私も成長して、母親自身の手で私の見る世界をすべてコントロールできなくなってくると、私の好きなものを鼻で笑ってあしらうようになった。私は、好きなものをひとに話せなくなった。気がつくと、私の居場所はどこにもなくなっていた。

 

小学生の頃から続いていた不眠と過呼吸はさらに酷くなり、精神を病んだ。

 

それでも、好きなものは諦めたくはなかった。読書、茶道、書道、音楽、そしてアニメ。

心の支えだった。

精神状態が悪化して、何もできないときもあったけれど、何かできそうなときには決まってこれらを支えにしていた。

 

そんな私も、もう大学生である。

決められたアルバイトなら許されて、クレジットカードをつくった。自分で稼いだお金で、好きなものを買って、私はちいさな自立を手に入れた。そして、今年5月、大好きな『ユリ熊嵐』のキャラクターデザイナーさんの同人誌を通販で一冊買った。それは、何故だか、私のなかではおおきな自立になった。好きは恥ずかしいものでもないんだ。好きなものを好きでいいんだ、と感動した。ただただその一冊を購入したという事実が、私を自立させたのだろうか、過去の自分との決別となった。

 

うれしかった。

 

でも、見つかるかもしれないし、捨てられるかもしれないし、罵られるかもしれない。見つかったら、確実にそうなるだろう。

 

だけど、私は私の感情を優先して行動した。

いままでは、私は周囲の目を気にして何ひとつ私の感情を大切にしたことはなかった。ほかのことに対してもすべてだ。自分を大切にすることは、自分で自分を生かしていくことなのだ。

 

とはいえ、いまでも闘っている。

自立には程遠い。

けれど、自分の感情を自分が大切にしてやらなかったらいったい誰がそれを処理できるのだろう。私は、この出来事をきっと忘れない。